以下、時事通信社の記事より引用
セブン&アイ・ホールディングスは18日、傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂について、2020年2月期までに、全体の約2割に当たる40店を閉鎖する方針を固めた。不採算店や老朽店を中心に、売却や統廃合を進め、収益改善を図る。
イトーヨーカ堂は全国で総合スーパーと食品スーパー約180店を展開するが、衣料品の不振などから業績は低迷し、抜本的な見直しを迫られていた。不採算店などを対象に、16年2月期に数店を閉鎖し、その後も20年2月期までに順次、店舗を閉めていく。社員は配置転換で近隣店やグループ会社に振り分ける方針だ。(2015/09/18-11:57)
以上引用
今度はイトーヨーカ堂が大量閉鎖です。9月16日には、大手総合スーパーのユニー(アピタ、ピアゴ)が230店舗のうち最大50店舗の閉鎖を検討すると発表したばかりですが、まるで合わせたかのようなタイミングでの発表。ユニーと違って今回はかなり具体的な閉店数の目標が掲げられており、内部では閉鎖店舗リストも既に作られているのではないでしょうか。イトーヨーカ堂は2009年にも3年間で30店舗の閉鎖を発表していましたが、2011年に発生した東日本大震災の影響で東北地方の閉店を取りやめ、実際の閉店数は19店舗だったそうです。
ここで、直近のイトーヨーカ堂の決算状況を見てみましょう。(セブン&アイHDの中のデータなので、第1四半期では経常利益、純利益の記載はありません。)
2015年2月期決算
営業収益 1兆2859億4200万円 (前年同期比 2.0%減)
営業利益 18億5900万円 (前年同期比 83.5%減)
経常利益 41億4200万円 (前年同期比 68.3%減)
当期純利益 △68億8100万円 (前年同期 53億3300万円の利益)
2016年2月期第1四半期決算
営業収益 3211億7400万円 (前年同期比 1.1%減)
営業利益 3000万円 (前年同期比 99.0%減)
前期では最終利益が赤字へ転落しており、利益も大幅な減益です。一方今期はもっと深刻で、営業利益率はわずか0.01%。店頭で1万円の商品を売っても残る利益はたったの1円という悲惨な状況です。今期の第2四半期決算では営業赤字へ転落したと見られ、大量閉鎖もやむ負えない状況であると言えるでしょう。先日、セブン&アイホールディングスはファーストリテイリング(ユニクロ)と業務提携しましたが、悠長に衣料品売場の改革に取り組んでいる余裕はないと判断したようです。
現在、国内の総合スーパーは売上高上位5社がすべて苦戦しています。イオン、イトーヨーカ堂、ユニー、ダイエーはいずれも営業赤字ないし最終赤字を計上しており、西友も今年の3月から4月に30店舗を閉鎖しました。大型店で衣料品や住関連品などを幅広く取り揃えた総合スーパーは、高度経済成長期に急成長し、全国に広まりました。画一的な売場づくりと品揃えが行われ、ワンストップショッピングと価格訴求力で多くのお客を集めましたが、ユニクロや家電量販店などの専門店に押され、90年代から業績は悪化の一途をたどります。特に衣料品部門の赤字は深刻で、総合スーパーは多くの店舗で食品売場の利益で衣料品売場の損失を補っている状態です。かつて衣料品は総合スーパーの花形であり、長崎屋のように衣料品だけでやっていくスーパーもあったほどなのですが、現在スーパーの洋服に良いイメージを持つ人は残念ながらほとんどいません。
一方、利益を出している総合スーパーもあります。西日本に大型ショッピングセンター「ゆめタウン」を展開するイズミ、滋賀県で圧倒的なシェアを持つ平和堂、経常利益率7.8%を叩きだす沖縄最大手のサンエーなど、地方の総合スーパーは好調を維持しています。これらのチェーン店は、全店共通の品揃えではなく、地域に密着した品揃え・販売戦略を行っており、顧客の支持につながっています。
閉鎖される店舗は不採算・老朽化した地方の店舗が中心だと報道では伝えていますが、イトーヨーカ堂が展開する181店舗の内130店舗が関東地方にあり、さらに43店舗が東京都に立地しています。今年3月に西友が閉店した30店舗は奇跡的に東京都が含まれていませんでしたが、イトーヨーカ堂は城東地区に多くの老朽化した店舗を抱えており、これらが閉店される可能性は高いと考えられます。