さくら野百貨店八戸店
- 2022/12/10
- 13:37
青森県八戸市。
JR本八戸駅から徒歩9分程度のところに、さくら野百貨店八戸店はあります。
1968年に「丸光八戸店」として開業した店舗です。宮城県を拠点に展開していた丸光は、1978年には大手スーパー「ニチイ」(のちのマイカル)の支援によりカネ長武田百貨店(青森)・山田百貨店(福島)・イチムラ(新潟)・小美屋(神奈川)と共に株式会社百貨店連合を設立します。店名をダックシティ、ビブレと変え営業を続けてきましたが、2000年に親会社のマイカルが経営破綻。青森店の建物の貸主である武田株式会社などが出資し事業再生を目指すこととなり、2002年には公募により選ばれた「さくら野百貨店」へ社名・店名を変更し、新しいスタートを切りました。
店舗外観

八戸市の中心街である三日町に立地します。目の前には「中心街ターミナル」のバス停もあります。

隣接する書籍、文房具、雑貨販売のカネイリとは建物が一体化されており、3階以上のフロアはさくら野百貨店の売場となっています。

326台収容のタイムズが隣接しており、各フロアと連絡しています。

「売場お入口」

駐車場の向かいにはこのような建物があり、かすかに「VIVRE」の文字が残っています。

駐車場棟の屋上にやってきました。

周囲からは見えにくいですが、屋上広告塔の下に展望台が設置されています。
現在はさくら野百貨店の屋上部分も含めて立ち入ることは出来ません。

朽ち果てそうな非常階段とともに、ここだけ時が止まっているかのようです。

現在は周囲にさくら野百貨店と同じかそれ以上高い建物が立ち並びますが、開業当初は眺めが良かったのでしょうか。

内部の様子を窺うことは出来ませんでした。

さくら野百貨店から至近距離に立地する、2022年4月10日に閉店した三春屋の建物はいまだ活用されずに残っています。

さくら野百貨店の正面入口。

フロアガイド。地下1階から地上6階の7フロアで営業しています。

1階から3階までは2人用エスカレーターですが、3階以上は1人用となります。

古い百貨店や総合スーパーにあるシンメトリーな階段。

まずは地下1階食料品フロアから見ていきましょう。
地下への階段。

平面フロアガイド。

青果は「北の大地」が担当。

上質な果物や旬の野菜が並びます。

鮮魚は仙令平庄が担当。
ちなみに精肉は直営で運営しており、対面販売の量り売りコーナーなどは設けていません。

惣菜売場。

本格冷凍食品のプロトンも取り扱い。

Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)の商品もコーナー展開。

加工食品では成城石井の商品も導入します。

成城石井のお菓子コーナー。

均一菓子はなぜか山崎製パンの良味100選。

スーパーマーケットのように集中レジを4台配置しています。

ベーカリーはフジパン系列のホルンが入居。

青森県特産品・お土産品コーナーも設けています。

和洋菓子などの銘品も一通り揃えています。

地下にも飲食店街があり、中華料理店などが入居しています。

1階は化粧品コーナーや服飾雑貨のフロア。
煌びやかな空間を演出します。

季節感のある装飾や丁寧な陳列など、売場のクオリティは決して悪くありません。

スポット照明も導入し上質感を演出。

地権者の「クスリの大学堂」が1階に出店。

2階は紳士服のフロア。
一般的な百貨店が2階・3階などを婦人服フロアとし、その上に紳士服を配置するのとは異なります。



1階と2階の一部は隣接するカネイリと直結しており、3階以上はさくら野百貨店の売場として一体的に運営されています。

3階婦人服フロア。


4階婦人服フロア。奥には100円ショップ「セリア」も見えます。


5階は子供服と呉服のフロア。


呉服は直営とテナントで揃えています。

6階は暮らしのフロア。

催事場ではお歳暮ギフトセンターが開設されていました。

調理器具や食器のコーナー。

タオル・寝具コーナー。

八戸プラザホテルが運営するレストラン樹林も入居します。

さくら野百貨店八戸店 店舗概要
開業: 1968年6月28日
売場面積: 13423㎡(日経MJより)
営業時間: 午前10時~午後6時30分
住所: 青森県八戸市三日町13
駐車場: あり(1,000円以上お買上のお客様=2時間無料・5,000円以上お買上のお客様=3時間無料・20,000円以上お買上のお客様=4時間無料)
HP: https://sakurano-dept.jp/hachinohe/
1968年に「丸光八戸店」として開業した店舗です。丸光は1946年に仙台駅前に雑貨店として創業し、1953年に「さくら野百貨店仙台店(2017年2月閉店)」の土地で百貨店としての営業を開始。その後は拡大路線を取り、石巻、釜石、気仙沼、郡山に続いて八戸へ進出しました。1978年には大手スーパー「ニチイ」(のちのマイカル)の支援によりカネ長武田百貨店(青森)・山田百貨店(福島)・イチムラ(新潟)・小美屋(神奈川)と共に株式会社百貨店連合を設立。1982年には各社が百貨店連合の傘下に入り、経営が引き継がれました。
1985年に社名を「ダックシティ」へ変更し、店名も変更されますが、その後ニチイが展開していたファッションビルブランド「ビブレ」へと再度転換され、1998年には社名を「ダックビブレ」へ変更。2000年に親会社のマイカルが経営破綻したことに伴い、民事再生法の適用を申請しますが、青森店の建物の貸主である武田株式会社などが出資し事業再生を目指すこととなり、マイカルグループを離脱しています。2002年には公募により選ばれた「さくら野百貨店」へ社名・店名を変更し、新しいスタートを切りました。
2005年には仙台店を運営する株式会社さくら野百貨店(2010年にエマルシェへ社名変更)、仙台店の資産管理をするさくら野DEPT仙台、仙台以外の東北の店舗を運営するさくら野東北株式会社(2010年に株式会社さくら野百貨店の社名を引き継ぐ)の3社へ会社分割を実施。2017年2月27日にはエマルシェが運営するさくら野百貨店仙台店が資金繰り悪化のため突然営業を停止し、破産を申請。一方で青森、弘前、八戸、北上を運営するさくら野百貨店は営業を継続しています。
経営を見ると、百貨店業界の衰退に加え地方百貨店の寄せ集めということもあり厳しい状況が続いています。エマルシェは31億円の負債を抱えて破産し、さくら野東北から改称したさくら野百貨店も2009年2月期より債務超過に陥り、2012年には主要株主の武田が15億~20億円程度の債権放棄に応じています。その後4店舗全てで改装を実施し、収益性の改善に取り組みましたが、直近では消費税増税や新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり業績が悪化。2020年2月期は売上高182億3000万円に対して最終赤字3億3300万円を計上し、翌年も5億9300万円の赤字、2022年2月期も3億6600万円の赤字となり、純資産はわずか3500万円、自己資本比率0.9%という危機的状況で、今期には再び債務超過に転落する可能性が大きくなっています。一方で親会社の不動産会社、武田は2021年8月期で純資産68億円を有しており、2012年のようにさくら野百貨店を支援する余裕があります。もし経営破綻し全店閉店となれば、青森県から百貨店が消滅する(弘前の中三は百貨店協会に非加盟)事態となるため、存続へ向けて支援に乗り出すのではないでしょうか。
さくら野百貨店八戸店の売上高は以下の通りとなっています。(日経MJより)
2015年度 40億2800万円
2016年度 38億6300万円
2017年度 37億2800万円
2018年度 35億7200万円
2019年度 34億7800万円
2020年度 27億200万円
2021年度 29億6500万円
長期的に見ると緩やかな減少傾向となっています。2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、百貨店業界は全国平均で27.2%と大幅な売上減少が生じており、さくら野百貨店八戸店も22.3%の減少となりました。一方で2021年度は持ち直していますが、競合であった三春屋が2021年8月に全従業員約140人の約7割にあたる約100人に解雇通知を出すなど経営が迷走しており、顧客がさくら野へ流出した結果だと推測されます。三春屋はその後改装計画を断念し、2022年4月10日をもって営業を終了しています。さくら野は残存者利益を獲得するため、2022年度も売上が伸長する可能性もありますが、現状は百貨店としては非常に厳しい売上水準にまで落ち込んでおり、親会社の意向次第では閉店もあり得ると考えられます。
訪れたのが平日であったため店内のお客さんは疎らでしたが、地下食料品フロアは中心市街地では貴重な生鮮品が揃うお店として人気を集めていました。三春屋の閉店に伴いさくら野へ移転して営業を続ける店舗・ブランドもあり、今後は八戸市唯一の百貨店として顧客獲得に努めたいところです。
JR本八戸駅から徒歩9分程度のところに、さくら野百貨店八戸店はあります。
1968年に「丸光八戸店」として開業した店舗です。宮城県を拠点に展開していた丸光は、1978年には大手スーパー「ニチイ」(のちのマイカル)の支援によりカネ長武田百貨店(青森)・山田百貨店(福島)・イチムラ(新潟)・小美屋(神奈川)と共に株式会社百貨店連合を設立します。店名をダックシティ、ビブレと変え営業を続けてきましたが、2000年に親会社のマイカルが経営破綻。青森店の建物の貸主である武田株式会社などが出資し事業再生を目指すこととなり、2002年には公募により選ばれた「さくら野百貨店」へ社名・店名を変更し、新しいスタートを切りました。
店舗外観

八戸市の中心街である三日町に立地します。目の前には「中心街ターミナル」のバス停もあります。

隣接する書籍、文房具、雑貨販売のカネイリとは建物が一体化されており、3階以上のフロアはさくら野百貨店の売場となっています。

326台収容のタイムズが隣接しており、各フロアと連絡しています。

「売場お入口」

駐車場の向かいにはこのような建物があり、かすかに「VIVRE」の文字が残っています。

駐車場棟の屋上にやってきました。

周囲からは見えにくいですが、屋上広告塔の下に展望台が設置されています。
現在はさくら野百貨店の屋上部分も含めて立ち入ることは出来ません。

朽ち果てそうな非常階段とともに、ここだけ時が止まっているかのようです。

現在は周囲にさくら野百貨店と同じかそれ以上高い建物が立ち並びますが、開業当初は眺めが良かったのでしょうか。

内部の様子を窺うことは出来ませんでした。

さくら野百貨店から至近距離に立地する、2022年4月10日に閉店した三春屋の建物はいまだ活用されずに残っています。

さくら野百貨店の正面入口。

フロアガイド。地下1階から地上6階の7フロアで営業しています。

1階から3階までは2人用エスカレーターですが、3階以上は1人用となります。

古い百貨店や総合スーパーにあるシンメトリーな階段。

まずは地下1階食料品フロアから見ていきましょう。
地下への階段。

平面フロアガイド。

青果は「北の大地」が担当。

上質な果物や旬の野菜が並びます。

鮮魚は仙令平庄が担当。
ちなみに精肉は直営で運営しており、対面販売の量り売りコーナーなどは設けていません。

惣菜売場。

本格冷凍食品のプロトンも取り扱い。

Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)の商品もコーナー展開。

加工食品では成城石井の商品も導入します。

成城石井のお菓子コーナー。

均一菓子はなぜか山崎製パンの良味100選。

スーパーマーケットのように集中レジを4台配置しています。

ベーカリーはフジパン系列のホルンが入居。

青森県特産品・お土産品コーナーも設けています。

和洋菓子などの銘品も一通り揃えています。

地下にも飲食店街があり、中華料理店などが入居しています。

1階は化粧品コーナーや服飾雑貨のフロア。
煌びやかな空間を演出します。

季節感のある装飾や丁寧な陳列など、売場のクオリティは決して悪くありません。

スポット照明も導入し上質感を演出。

地権者の「クスリの大学堂」が1階に出店。

2階は紳士服のフロア。
一般的な百貨店が2階・3階などを婦人服フロアとし、その上に紳士服を配置するのとは異なります。



1階と2階の一部は隣接するカネイリと直結しており、3階以上はさくら野百貨店の売場として一体的に運営されています。

3階婦人服フロア。


4階婦人服フロア。奥には100円ショップ「セリア」も見えます。


5階は子供服と呉服のフロア。


呉服は直営とテナントで揃えています。

6階は暮らしのフロア。

催事場ではお歳暮ギフトセンターが開設されていました。

調理器具や食器のコーナー。

タオル・寝具コーナー。

八戸プラザホテルが運営するレストラン樹林も入居します。

さくら野百貨店八戸店 店舗概要
開業: 1968年6月28日
売場面積: 13423㎡(日経MJより)
営業時間: 午前10時~午後6時30分
住所: 青森県八戸市三日町13
駐車場: あり(1,000円以上お買上のお客様=2時間無料・5,000円以上お買上のお客様=3時間無料・20,000円以上お買上のお客様=4時間無料)
HP: https://sakurano-dept.jp/hachinohe/
1968年に「丸光八戸店」として開業した店舗です。丸光は1946年に仙台駅前に雑貨店として創業し、1953年に「さくら野百貨店仙台店(2017年2月閉店)」の土地で百貨店としての営業を開始。その後は拡大路線を取り、石巻、釜石、気仙沼、郡山に続いて八戸へ進出しました。1978年には大手スーパー「ニチイ」(のちのマイカル)の支援によりカネ長武田百貨店(青森)・山田百貨店(福島)・イチムラ(新潟)・小美屋(神奈川)と共に株式会社百貨店連合を設立。1982年には各社が百貨店連合の傘下に入り、経営が引き継がれました。
1985年に社名を「ダックシティ」へ変更し、店名も変更されますが、その後ニチイが展開していたファッションビルブランド「ビブレ」へと再度転換され、1998年には社名を「ダックビブレ」へ変更。2000年に親会社のマイカルが経営破綻したことに伴い、民事再生法の適用を申請しますが、青森店の建物の貸主である武田株式会社などが出資し事業再生を目指すこととなり、マイカルグループを離脱しています。2002年には公募により選ばれた「さくら野百貨店」へ社名・店名を変更し、新しいスタートを切りました。
2005年には仙台店を運営する株式会社さくら野百貨店(2010年にエマルシェへ社名変更)、仙台店の資産管理をするさくら野DEPT仙台、仙台以外の東北の店舗を運営するさくら野東北株式会社(2010年に株式会社さくら野百貨店の社名を引き継ぐ)の3社へ会社分割を実施。2017年2月27日にはエマルシェが運営するさくら野百貨店仙台店が資金繰り悪化のため突然営業を停止し、破産を申請。一方で青森、弘前、八戸、北上を運営するさくら野百貨店は営業を継続しています。
経営を見ると、百貨店業界の衰退に加え地方百貨店の寄せ集めということもあり厳しい状況が続いています。エマルシェは31億円の負債を抱えて破産し、さくら野東北から改称したさくら野百貨店も2009年2月期より債務超過に陥り、2012年には主要株主の武田が15億~20億円程度の債権放棄に応じています。その後4店舗全てで改装を実施し、収益性の改善に取り組みましたが、直近では消費税増税や新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり業績が悪化。2020年2月期は売上高182億3000万円に対して最終赤字3億3300万円を計上し、翌年も5億9300万円の赤字、2022年2月期も3億6600万円の赤字となり、純資産はわずか3500万円、自己資本比率0.9%という危機的状況で、今期には再び債務超過に転落する可能性が大きくなっています。一方で親会社の不動産会社、武田は2021年8月期で純資産68億円を有しており、2012年のようにさくら野百貨店を支援する余裕があります。もし経営破綻し全店閉店となれば、青森県から百貨店が消滅する(弘前の中三は百貨店協会に非加盟)事態となるため、存続へ向けて支援に乗り出すのではないでしょうか。
さくら野百貨店八戸店の売上高は以下の通りとなっています。(日経MJより)
2015年度 40億2800万円
2016年度 38億6300万円
2017年度 37億2800万円
2018年度 35億7200万円
2019年度 34億7800万円
2020年度 27億200万円
2021年度 29億6500万円
長期的に見ると緩やかな減少傾向となっています。2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、百貨店業界は全国平均で27.2%と大幅な売上減少が生じており、さくら野百貨店八戸店も22.3%の減少となりました。一方で2021年度は持ち直していますが、競合であった三春屋が2021年8月に全従業員約140人の約7割にあたる約100人に解雇通知を出すなど経営が迷走しており、顧客がさくら野へ流出した結果だと推測されます。三春屋はその後改装計画を断念し、2022年4月10日をもって営業を終了しています。さくら野は残存者利益を獲得するため、2022年度も売上が伸長する可能性もありますが、現状は百貨店としては非常に厳しい売上水準にまで落ち込んでおり、親会社の意向次第では閉店もあり得ると考えられます。
訪れたのが平日であったため店内のお客さんは疎らでしたが、地下食料品フロアは中心市街地では貴重な生鮮品が揃うお店として人気を集めていました。三春屋の閉店に伴いさくら野へ移転して営業を続ける店舗・ブランドもあり、今後は八戸市唯一の百貨店として顧客獲得に努めたいところです。